|
明菜さんが曲の主人公を演じて表現してきたことは周知の通りであると思うが、
復帰後の曲は、いずれも明らかに明菜さんの想いが凝縮されている。
ただ、過去の曲をみても同じような位置付けの曲があると思っている。
そのひとつが、この「帰省」である。
この曲は、人間中森明菜が歌手中森明菜に対して歌っているように聴こえる。
この曲の「あなた」は中森明菜であり、「あなた」に向けて歌っているのも中森明菜であるように聴こえる。
私が明菜ファンになったのは、明菜さんの復帰の数日前であり、ちょうどマスコミが紅白に出る出ないで騒いでいた頃である。
マスコミの多くは、「出場はありえない」「もう、人前で歌えない」と否定的な意見であったと思う。（同様の記事は相変わらず継続中のようである）
でも、私は、明菜さんはいつか必ず復帰して歌い続けるだろうと思った。
それは、この「帰省」に明菜さんの決意が込められているからである。
この曲のライブの歌唱はDVDに残されてない。
残念ながら私は明菜さんのライブに行ったことがないので、当然、この曲を歌う姿を観たことがない。
私の情報収集が正しければ、この曲は魂を振り絞った熱唱であり、2002年のライブが最後のようである。
その翌年の2003年、明菜さんは自ら作詞した「Days」と「I Hope So」をライブで歌っている。
これは私の勝手な解釈であるが、「帰省」は自分自身に向けた歌であり、その決意をファンに向けて自分の言葉として伝えたのがこれら2曲なのではないかと思っている。
こうしてみると、私には今回の新曲にある想いがこれらの曲と一連の繋がりがあるように聴こえる。
「折れた翼」は、もう、もとには戻せない。
やはり、一度壊れたものは再生不能である。
しかし、以前のように自由に羽ばたくことは出来なくても、別の形で飛べる可能性はある。
都会の空の下、一度は居場所をなくしたかもしれない。
でも今は、「潤った翼」を広げる場所がある。
そして再び、砂埃を上げて過去をはき捨て守るべきもののために羽ばたいた。
おそらく、頑張って無理をし過ぎたのであろう。
明菜さんの翼は、一か所ではなく複数折れているのだと思う。
だから、修復の目途は立たず、しばらくの間、鳥籠の中で休まざるを得なかった。
ただ、それでももう一度大空に羽ばたくイメージを忘れることはなかったと思う。
「雨月」は、今現在ではなく、復帰の目途が立たない状況の中、再び歌うことができる可能性がかろうじて見えてきた時の心境ではないかと思っている。
もしかしたら「unfixable」も、男女のすれ違いにかけて自分自身の葛藤の気持ちを表現しているのかもしれない。
今は、鳥籠の中、再び羽ばたくための練習を繰り返しているのではないかと思う。
その翼の回復具合はわからないが、「unfixable」のジャケット写真は、100％の笑顔までもう少し待っていてねというメッセージに思える。
「帰省」のサブタイトルは、「Never Forget」である。
明菜さんは、ファンのことを決して忘れない。
私たちファンも、明菜さんを忘れることはない。
だから、明菜さんには安心して専念して欲しい。
もう一度羽ばたける風が吹くその時まで気長に待ちたいと思う。
| |
