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この曲は明菜自身が作詞をしたものだ。ＣＤで聴いた限りでは明菜が作詞をしたとしてもありがたみは感じなかった。特に印象に残る曲でもなかった。色鮮やかな記憶が残るように変わったのは1991年7 月に幕張メッセで生で聴いたときだった。1989年、明菜が自殺未遂を起こしてから初めてのライブだった。明菜も何度も涙ぐみながら歌っていたし、観客の中からも激励の声が飛んだ。通常のライブとはちょっと違う空気が流れていたのは確かだった。夢ライブの最後の曲が『忘れて』だった。歌詞のリピート部分が終わり、エンディングで終わるのかと思いきや、ライブ用の特別の詩が歌われたのだった。特別な歌詞が下の♪～♪の部分である。
♪今日はこれで さよならだけど
あとひとつだけ 聞いてほしい
色んな事 心配かけて
心から ゆるしてほしい
このステージに立つ昨日まで
夢の中では 不安ばかり
そんな私が今 浴びてるのは
あたたかな瞳（かぜ）… 皆の笑顔
忘れないで 忘れないで
皆へのこの想い 変わらない
みつめていて みつめていて
明日からも 今までの 私でいるから…♪
特別な歌詞を生で聴いて今まで印象にあんまり残っていなかった曲が、急に大好きな曲に変わった瞬間だった。涙ぐみながら、でも笑顔を見せ歌う明菜がいた。何よりも詩に込められた思いが嬉しかった。聴いている方も涙ぐみながら聴いていた。
声はブランクがあって出ていなかった部分もあったが、衣装替えもあり、曲目も多く、何よりも明菜の思いが詰ったライブでとても満足がいくものだった。『水に挿した花』が好きという超ライト明菜ファンの友達とこのライブに行った。「『水に挿した花』を歌ってくれてよかった」「涙に溢れていたライブだね」と感想を終わった後に言ってくれた。自分が満足したライブであったので、友達の意見を好意的に捕らえていた。でも、そう思っていたのは私だけだったみたい。数年たって、友達があのライブにドン引きしていたことにようやく気がついたのだ。
明菜ジャンキーからすれば、明菜の思いが詰ったライブは非常に良かった。でも、人によっては明菜の思いが詰ったライブは重過ぎるのだ。明菜の思いを受け入れられるか、受け入れられないかによって、明菜ジャンキーになるか明菜を通過していくかの分かれ道のひとつになる。特別な歌詞の部分が好きか、ちょっと引くものがあるかによって、明菜を通り過ぎるか深く明菜ジャンキーになるかの試金石になる曲だ。
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