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私がこの曲を初めて聴いたのは、まだファンになる前のことだった。
あの件以来ほぼ１年ぶりにTV番組に復帰した時の映像だった。
あの件のいきさつを深く知っていたわけではなく、ファンでもなかった私は、どちらかというと中森明菜に対して擁護、同情する立場にはいなかった。
それで１年ぶりに顔を見せて、異様な陽気さを持ったこの曲を、真っ黒に日焼けした肌にビーチリゾートの軽装で、軽やかなステップを踏みながらにこやかに歌う中森明菜を見たとき、どことなく違和感を感じたものである。もっと強い言葉でいえばちょっとした幻滅感を持ったといってもいい。
”どうしてそのように軽くふるまえるのか””それがあの「中森明菜」のパフォーマンスか”と･･･
結果的に、この曲は５０万枚を越える大ヒット曲となり、中森明菜が健在であることを印象付けた。
しかしそれとは裏腹に、その後私の脳裏から「中森明菜」という名前は消えていった。
この曲を再び耳にするのは、それから１０年以上たってからのことだった。
中森明菜の歌に興味を持ち出してから買った、'91の夢ライブの映像だった。
まったく違った印象だった。自然ないい笑顔だった。
この曲の前に出された「I missed ”The Shock”」「LIAR」、あとに出された「水に挿した花」「二人静」と並べてみた時、私には曲調がこの曲だけ異質な印象を受ける。
85年以降中森明菜は、アイドル路線から女性アーティスト路線と変貌していき、送り出す曲はどれも深みと重さ（翳り）が伴うようになっていた。
そんな中でこの曲からくる印象は、どちらかというとあたかも84年以前のアイドル路線に戻ったかのようなテイストなのである。（夢ライブでも「アサイラム」「サザン・ウインド」と一緒に歌われた）
今改まって考えると「DEAR FRIEND」は、80年代後半の「中森明菜」を一度リセットした曲だったのではないだろうかと感じる。「中森明菜とはなんなのか」をもう一度問いかけてみたというか･･･
結局、路線の変更はなかった。
いわば「つかの間の回帰」だったのではないかと感じるのである。
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