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この歌の歌唱方法は数ある明菜さんの歌い方の中でもかなり異色だと思う。
第一印象は「つたない歌い方だな〜」でした。
言葉の意味をわかっているのかどうなのか、というほどおぼつかない消化力。
だけど、歌の世界観は充分伝わってくる。
特に♪帰りたい 帰れない♪のところなんかは「ああ、そうなんだ。帰りたいけど帰れないのね〜」と素直に心に響く。どうして帰れないのか？そのところは飛ばして子どもが親に「ここにいなさい」と言われたからその場にじっとたたずんでいるようなそんな絵が浮かんでくる。
自分ひとりの力では到底覆せない程の大きな見えない力におびえるように日暮れの坂道に長い影を落としながらたたずむ女。
ぽつりぽつりとつぶやく歌はそんな女の気持ちの溝を埋めてくれるのだろう。
自分に言い聞かせるように歌い続ける女。
そこにもう一つの絵が見えてくる。
まだ少女だった女と少女の母親。
日暮れの坂道母の歌う歌を聞くともなしに聞きながらのぼる二人の影。
ふと、歌うのをやめ立ち止まる母親の手を引っ張る少女。
「帰ろうよう・・」少女は言いかけて言葉を飲み込む。
母の目に涙が浮かんでいる。
少女は握った手をギュッと握ることしか出来ず、ただ黙って母の涙が枯れるのを待っていた・・。
幼い頃意味もわからず聞きなじんだ悲しい歌のフレーズがふと思い出されてつぶやいてみた。
そんな風にも受け取れます。
自分の悲しみとその歌を歌った人の悲しみと、聞いたときの心細さと・・。
そういう色んな感情が歌を口ずさむことで不思議と混ざり合い
今時分が抱える悲しみを幼い頃の自分が必死で受け止めようとしたように自分の中の「小さい自分」がそばでじっと聞いていてくれるような・・誰のためでなく自分のために歌う姿が浮かびます。
最初に「つたない」と感じたのはこの幼い感情が混じっているからでしょうか。
つらい現状をどこかで「あ、やっちゃった・・」と見ている冷静さを残しながらもそんなどうしようもなさに途方にくれるおろかな女の姿が悲しいです。
同じようなつたなさを感じた歌唱に「月の微笑」があります。
こちらは外国語で歌っているようなたどたどしさというのでしょうか。
与えられた言葉に無理無理に気持ちをなぞっているような窮屈さがあるように思います。
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