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この曲はなんでだか僕には"小室さんなカンジ"があまりしない楽曲です。多分、他の歌手の小室作品や｢MOONLIGHTSHADOW｣｢愛撫｣なんかと比べても、小室さんらしい無機質で多様な音の世界が、この曲にはあまり観られないからでしょうね。
この詩は、松本隆さんが当時の明菜の印象に基づいて書いた詩なのでしょうか、大スターの生い立ちの孤独、栄光の裏側の埋められない隙間…。
幸せは買えない 絶対に買えない
何が幸せなのか、人によって感じ方はさまざまでしょう。どこかのＩＴ企業の社長さんのようにお金さえあれば何でも手に入ると思うような方もいれば、お金の心配なんて全くしなくていいような生活を送っているような方でも｢自分は不幸だ｣と思っている場合だってある。
いうまでも無く、この詩の中で大半を占めているのはノーマ・ジーン＝マリリン・モンローの栄光と挫折の人生を少々ファンタジックに綴った部分、残りはそれを見つめるノーマ・ジーンとは縁もゆかりも無いはずの一女性の想い。
でもこの女性のノーマ・ジーンに対する共感は並じゃない、間違いなく一度は何かの場でトップに上り詰めた女性の心情です。
おそらくこのアルバム製作途上の、中森明菜の置かれた状況を松本隆氏はノーマ・ジーンと重ねてしまったのですね。恵まれないながらも精一杯自分らしく過ごした幼年・少女期、東京都下とはいえ都心部とはかけ離れた清瀬から、日本の中心で成功を収める過程、詩中のノーマ・ジーンをなぞる部分でも中森明菜が浮かび上がる。
｢偽りだらけの生涯 貴女の瞳に涙があふれる｣…嘘と虚飾のあふれる芸能界、成功を収めつつある中でも(ツッパリ)(生意気)(マネージャー首切り人)などの悪イメージで、マスコミを中心にした世間からの誹謗中傷にさらされ、それでもひたむきに生きる女性の涙、｢誰か教えてよ あの無邪気な日戻る方法 穢れ知らぬ心で生きていた少女よ｣
２番以降はもっとダイレクトにスターの裏側がさらけ出される、孤独にさいなまれて、それでもどう使用も出来ずにいる女性がそこにいるのみ…。
そして最後にノーマ・ジーンの生き方に共感した女性の心の叫びが炙り出される、｢悲劇だっていいのよ 美しく生きたい｣。
この詩を前にして当時の明菜さんは何を思ったのでしょうか。悪夢のような事件から立ち上がって３年余り、ついてしまった心の深手はそう簡単に癒されるものではなかったでしょう。ご本人の真意はご本人の中にしかありませんが、長い間明菜さんを見つめているファンにはなんとなく想像できます、一時期はマスメディアのインタビューにすら｢不幸でいたい｣なんて語っていたぐらいですから。
この楽曲の歌唱ですが、なんとなく僕は｢迷い｣のようなものを感じました。高い音ではっちゃけてしまう歌でもありませんから、余計にそう感じたのかもしれませんが。
深読みを恐れずにいえば、この詩の世界というか歌の主人公の主張というか、そういった面を明菜さんが共感する思いと共感したくない思いが、出ているような気がするのです、多分僕の深読みです。
でもリリース当時からそのことを思っていたので、'９８ライブで歌われた時は｢ああ〜、この歌がこだわり無く歌える時がきたんだなあ〜｣なんて、一人勝手に想像してました。
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