| 私は、テレビをそんなに見る方ではない。
そういうわけでNHKもほとんど見ないのだが、たまに見るのが「プロフェッショナル仕事の流儀」と「SONGS」だった。
だから、昨年11月のSONGSも私にとってたまたま見ただけだった。
デビュー当時のアイドルからアーティストへの変貌を遂げる過程。
私にとって、有名なシングル曲でさえ遠い記憶の彼方だった。
その記憶を引き戻すかのように、合間に、「明菜は…」とナレーションが入る。
おそらく私は、このナレーション効果もあって感動を誘導されたように思う。
この番組は、ナレーション通り、「時代を超えて愛される中森明菜の秘密」を解き明かしてくれた。
この時私はまだ、明菜さんについて申し訳ないくらい知らないことばかりだった。
振付や衣装を自分で考えていたことも知らなかった。
オールタイムベストが世の中で売れていることすら、知らなかった。
もし、ただの歌番組のワンシーンだったら、もしかしたら私は明菜さんを見ても「懐かしい」で終わっていたかもしれない。
私は、難破船の最後で涙した。
でも、難破船という曲に感動して泣いたのではない。
10代の頃からここに至るまでの明菜さんの過程を見て、難破船を歌う明菜さんがとても愛おしく思えて涙した。
この当時まだ22歳。
小さい頃見ていた私は、難破船を歌う明菜さんはもっと年上だと思っていたので、今改めて年齢を知って驚いた。
ナレーションにあるように、この年齢で「凄み」を感じさせていた。
この凄みは、今まで何事にも本気で取り組んできたから表現できるものだと思った。
その時、私の感情は明菜さんによって大きく揺さぶられた。
それまで明菜さんに興味のなかった私は、それから何度もSONGSを見返した。
明菜さんの美しさや表現力は、うわべではなく内面から映し出されているものだと思った。
「この人は本物だ」
たまたまSONGSを見ていたあの時間は、私の人生にとってどんでもない瞬間だったのだ。
そういう意味で、私はNHK様様である。
ほとんどNHKを見ない私であるが、さすがNHK、きちんとわかっている人達か作製していると感心している。
NHKは、「中森明菜」がどれほど価値のある人間であるかとてもよく理解している。
明菜さんも、そんなNHKを信頼して今年のSONGS特番があったのだと思った。
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